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| 上腕骨外側上顆炎(テニス肘) TOP > 適応症 > 腕(肘、手首)の疾患 > 上腕骨外側上顆炎(テニス肘) ■概説 手の機能動作において、肘の解剖学的構造は、広い可動域が確保できるようになっています。肘関節複合体は、上腕骨、橈骨、及び尺骨の3つの骨で構成されています。近位にある上腕骨は、橈骨と尺骨の双方と関節でつながっています。橈骨は尺骨の外側に位置し、上腕骨と腕橈関節を構成しています。上腕骨の遠位端の形状は一部が大きな面になっていて、腱の付着部となっています。 腱は、密集して並ぶコラーゲン線維、エラスチン、プロテオグリカン、及び脂肪を成分としています。外側の鞘には神経、血管が発達していますが、骨との付着部分への血流は少なくなっています。肘外側腱炎で特に問題となるのは、外側上顆と呼ばれる上腕骨の拡大部分です。 一般に手関節及び手の伸筋群は、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、総指伸筋、小指伸筋、及び尺側手根伸筋から構成されています。長橈側手根伸筋は外側顆上稜の末端面に起始します。短橈側手根伸筋は長橈側手根伸筋の内側にあり、外側側副靱帯、外側上腕筋間中隔と同様に外側上顆から起始します。総指伸筋、小指伸筋は外側上顆の共通腱から起始するのに対して、尺側手根伸筋は尺骨の後部中央と外側上顆から起始する筋線維を有します。 腕橈骨筋は上腕骨の外側顆上稜から起始し、前腕の屈曲に関与します。回外筋は外側上顆に起始し、手のひらを下に向けた位置から上に向ける動作に働く主動筋です。外側側副靱帯は、外側上顆の下面から広がり、橈骨輪状靱帯と肘頭に付着する扇状の靱帯です。橈骨輪状靱帯は、橈骨頭を覆い尺骨の橈骨切痕に付着して、近位橈尺関節を安定させる働きをする帯状の靱帯です。 上腕骨外側上顆炎とは、前腕伸筋腱に反復してかかる負荷によって、小断裂・出血・部分剥離などが起き、肘外側の外側上顆周辺に疼痛を生じる病態のことをいいます。再発の確立が高く、患者の75%は利き腕の痛みを訴えます。年齢が45~64歳の年代層で最も多く、40歳以上の世代では、若い世代の2~3.5倍多くなります。1日に2時間以上の運動やウェイトトレーニングをするような人に最も多くみられ、女性の方が男性よりも有病率が高くなっています。 テニス選手の40~50%がいずれかの時点でこの疾患を経験する羅患率の高さから「テニス肘」とも呼ばれています。特にバックハンドストロークでの抵抗運動に発症リスクが高いことが挙げられ、スポーツ以外では、労作や作業によって手や肘を酷使している職種の人や主婦にもみられます。また肘外側の痛みは、内側よりも5~9倍多いことが報告されています。 一般的な外側上顆炎は、急性症状として起こり、前腕伸筋腱線維の炎症・微細損傷が原因の疼痛を意味します。しかし、外側上顆炎を発症したと思われる患者の組織を、発症後数ヶ月を経過してから観察すると、炎症細胞がみられないことが組織病理学的研究(生体内微小透析)によって明らかになっています。組織生検では、密になった線維芽細胞、組織の乱れた未成熟コラーゲン、炎症細胞の存在しないムコイド変性を示します。超音波画像を用いた検査からも、炎症よりもむしろ石灰化と腱の肥厚がみられることから、反復性外傷と瘢痕組織の修復における変性病態と一致しています。 これらの知見は、外側上顆炎の「腱炎症」と「腱炎」の2つの病態がはっきり異なることを裏付け、修復過程において別の処置が必要になることを明らかにしています。 ■症状 患者が訴える多くの症状は、肘の外側から前腕へと放散する痛みです。通常この痛みは、握る動作や手のひらを下に向けた握り方(アンダーグリップ)が必要なリフティング、または手のひらを下に向けた位置から上に向けるまでの回外動作が必要なリフティングなどを行うと発生します。外側上顆の5mm遠位のやや前面を押圧すると、ほとんどの患者は痛みを訴えます。 筋委縮、肘外側の腫脹、可動域の制限、及び反対側の腕と比較した場合の握力の衰えなどの体系がみられることがあります。 ■診断 肘外側に偏った負荷をかける特別な検査を行い判断します。Mill's Test:検者が外側上顆を押さえている間に、患者は前腕を回内させ手関節を掌屈し、肘を伸展させます。このときに外側上顆に痛みが生じれば陽性となります。Thomsen Test:患者の肘を固定し、手のひらを下に向けて拳を握ります。検者が手首の掌屈方向へ力をかける間に、患者はこれに低抗して手首を伸展させたとき、外側上顆に突発性の鋭い痛みが起きれば、陽性となります。Chair Test:手のひらを下にして椅子の背もたれを握り、その位置から椅子を持ち上げたとき、肘外側の痛みが再現すれば陽性です。Middle finger extension Test:中指の伸展に抵抗させたとき、外側上顆の痛みが引き起こされれば陽性となり、共通腱が痛みの発生源とみなされます。 外側上顆炎と類似した病訴は数多く存在するため、痛みの原因と本質を判断することは、大変重要となります。そのために必要なのは、潜在的な原因を理解していることです。肘外側痛を生じる可能性がある一般的な疾患を、以下に説明します。 上肢の主要な神経の1つである橈骨神経は、上腕骨後面を斜めに走行し、外側上顆付近で浅枝と深枝に分岐します。深枝は肘外側にある線維性のアーチのFroshe腱弓から回外筋を貫通し後骨間神経に至ります。そのため、回外筋や伸筋群の硬化、又は慢性炎症によるFroshe腱弓の肥厚などが原因で神経を緊張させ、外側上顆炎に類似した個所で痛みを生じます。通常は、活動後の痛みや握力の弱化が起こり、特に薬指と小指の伸展時の筋力低下がみられます。 肘の外側側副靱帯の傷害は、肘関節の後外側回旋方向の不安定性を起こすことがあり、肘の外側部分の広い範囲で活動に伴い痛みを生じることがあります。 年配者や肘を酷使している競技者などでは、腕橈関節又は近位橈尺関節の変形性関節炎による変性や、橈骨頭の退行性変性など関節内の障害が原因で肘外側痛を引き起こす場合もあります。 肘後部のインピンジメント又は肘筋のコンパートメント症候群も、肘外側痛を訴える場合があります。 脊髄神経の第6頚神経根への圧迫が、その神経支配に基づいた領域への障害、つまり肘外側痛と手関節伸展力低下の症状をもたらす場合があります。圧迫要因としては、脊柱関節の退行性変化、椎間板ヘルニア、腫瘍などによる空間占拠性の病巣によって起こる可能性があります。 ■治療 急性症状のときに最初に取るべき措置として、症状をさらに悪化させることのないよう、患者が通常行う作業やトレーニングの握る動作の仕事量を調整し、受傷した腱にかかる反復的な負荷を減らす必要があります。 腕橈関節や近位橈尺関節のサブラクセーションが原因で伸筋腱に必要以上に張力がかかっている場合は、それに関連する肩甲上腕関節、上部胸椎、頚椎のサブラクセーションも併せてアジャストメントすることにより、症状の改善をさせていきます。 症状の原因が腱の変性の場合では、組織の癒着を起こしている箇所の剥離をすることで、痛みの軽減や腱の再生を促します。 肘の過伸展と過剰な外反角度、手関節の屈筋群と伸筋群のバランスの欠如、及び前腕筋群の全般的な脆弱性などの解剖学的問題があると、障害を受ける確率が高くなります。そのような場合では、適応範囲内での肘関節のアジャストメントと前腕筋群のエクササイズを並行することで、腱にかかる異常な負荷の集中を減少させ、症状の軽減を目指します。 エクササイズを行うことでも障害を生じることがあります。原因としては、ウォームアップの不足、未熟なテクニック、トレーニングレベルで必要とされる筋力や持久力の不足、不適当な負荷の選択、疲労などがあります。テクニックやプログラムを適切に調整することも、痛みを軽減し再発を予防する重要な要素になります。 発症初期や特に症状が再発した場合は、ダンベルやバーベルを用いた、強い握力が必要とされる活動は避けるべきです。症状が抑えられるまでは、トレーニング種目の大部分を、楽なグリップや手掌を広げてハンドルを押す動作が可能なマシンを使ったエクササイズに変更することです。 ラケットスポーツに参加する場合や、ラケットスポーツのトレーニングをしている場合は、前腕部にストレスをもたらす可能性のある、異常なスイングフォームを再認識することは重要です。不適切なサイズのグリップも、前腕の筋群の緊張を増し、過剰なストレスをもたらします。ラケットのバランス、長さ、ストリングのテンションやパターンも、コントロールするための手関節伸筋群に影響を及ぼすため、より負担の少ないものを選択することです。 患部を保護することで痛みを軽減できるといわれている、様々な種類の装具が流通しています。研究によると、何らかの肘外側痛があると診断された患者の21%までが、装具を処方されていると示されています。 一般的には2種類の補助具、リストスプリント(手首のサポーター)とブレース(肘のサポーター)があります。しかし、それらの装具が回復を促進する上で効果的か否かについて、またその正確なメカニズムについても、いまだに多くの議論があるため、当院では装具を利用することを推奨しておりません。 |
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